送電線 記事一覧

2009年03月12日

送電線など低周波電磁場についての海外の対策事例

1)背景
2)小児白血病リスクなどを前提に予防的を採用している例
3)0.4μTを基準に対策を実施したオランダのケース
4)多様な利害関係者を含めた合意形成による対策を模索するイギリスのケース

1)背景
 我々が日常的にさらされる電磁波について、様々な健康影響の可能性が指摘されているが、その中でもっとも科学的な証拠が積み重ねられているのが小児白血病のリスクの上昇である。
送電線などから発生する超低周波の磁場による影響で、4μT以上の磁場に長期的にさらされ続けた場合、小児白血病の発症率が2倍程度上昇するというものである。人間を直接対象にした観察研究である疫学調査で示されているデータであり、世界各国の同様の研究で、ほぼ一貫して再現されている点で、信頼性が高いと認識されている。
 WHOなどでは、動物実験で指示する研究が少ないことを理由に、証拠は限定的だと判断されているが、諸外国の中には、これらの疫学研究のデータを重視し、何らかの対策を実施しているケースが出始めている。
 ここでは、諸外国での対策を実施している具体的なケースをいくつか紹介して、参考なる点を考察してみたい。

2)小児白血病リスクなどを前提に、予防的措置を採用している例
 下に示した表が、具体的に数値目標を上げて、送電線からの磁場の規制に取り組んでいるケースの一覧だ。現在国際的に導入されているガイドライン値が100μT(50Hzの場合)より低い値で規制しているが、必ずしも小児白血病のリスク上昇の目安とされる0.4μTとなっていない点が注目される。どちらかというと、「合理的に可能な限りで低く as low as reasonably achievable」という考え方に基づき、各国で合理的に達成可能な値が決定されているのではないかと推測される。

その中で、2005年に0.4μTの値で、対策を始めたオランダのケースをまず検討してみよう。

3)0.4μTを基準に対策を実施したオランダのケース
2006年11月7日の読売新聞で、オランダの小学校に隣接する変電所で低減対策が取られたケースが紹介されている。(出典1)
 小学校の左隣の変電所ができ、不安に思った保護者の要請で学校が電磁波測定したところ、玄関脇が1.6μT、教室の内部でも0.4μTという値が測定された。学校は、とりあえず変電所に近い2教室を別棟に移動。対策をPTA、学校、市、電力会社で協議の上、教室内が0.2μT以下になるよう変電設備に遮蔽設備を導入することが決定された。7万ユーロ(約990万円)の工事費は市が全額負担した。
 この様な対策が可能となる背景には、どのような国の政策があるのか?

全国で23000戸、11000人の子どもがリスクにさらされ、今後5000人増加と推定
 2000年に発表された2件のプール解析論文(過去の小児白血病の疫学研究データを再解析したもの)の発表を受けて、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は、0.2~0.5μT程度の磁場によって小児白血病のリスクを上げる可能性があるとの見解を発表した。(以下出典2)
2001年の第四次国家環境計画(NMP4)の中で、「現在の証拠の程度は、社会的コストと利益を勘案して適切な予防的手段をとるには十分である」とし、高圧線の近くで0.4μT以上の磁場にさらされている住居数の把握と、今後25年間での増加数の予測、磁場を低減するための技術とそのコストについての調査を開始した。
 その結果、既存の高圧送電線の近くで、0.4μT以上の磁場にさらされている住宅数は23000戸、そこに住む15歳未満の子どもの数を11000人と推定した。
さらに今後25年間で新たに建築される住宅数80,000軒の内、何も手を打たない場合、10,000軒が送電線周辺の磁場0.4μT以上の地域の中に建てられ、小児白血病のリスクにさらされる子ども数は5000人増加すると予測した。

地方自治体の土地利用計画でリスク人口を減らす
 そこでまず、将来的にリスクにさらされる人口の増加を抑えることを最優先課題として、2005年10月3日に、住宅・国土計画・環境省が、高圧送電線に関する政策を、(州・市などの地方自治体と電力会社に対する勧告を通知した。
勧告の内容は、主な2点。

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2006年12月12日

無線LANの電磁波は安全?

無線LANの電磁波について、2006年12月11日イギリス・タイムズ紙の記事の要約です。

以下記事要約

無線LANをはじめとするワイアレスネットワークの安全性について、海外で懸念の声が上がっている。

学校、事務所、公共機関などで、無線LANネットワークの設置が増えている。近い将来には、街全体がホットスポットになり、どこにいてもインターネットに接続できる環境になる可能性がある。

現在安全と考えられているレベルよりはるかに弱い電波であるが、健康被害の可能性を憂慮する声が徐々に増大してきている。

保護者からの要請により、ワイアレスネットワークを撤去する学校が増えている。オーストリアのザルツブルグ市では、市の衛生局が、学校や幼稚園では、無線LANやコードレス電話を使用しないように勧告している。

カナダでは、オンタリオにある、レイクヘッド大学は、構内の無線LANをすべて撤去した。副学長のフレッド・ギルバート博士は「体の組織や細胞への生理学的影響、行動障害の可能性を無視できない」と指摘する。

今年9月には、世界中の30人の科学者たちが「現在我々が浴びている電磁波の有害性を示唆する科学的証拠について、完全に中立な立場からの再評価を求める決議に署名した。

アイルランド環境医士会(IDEA)も、政府に対して電磁波の健康影響についての評価を求める声明を発表している。

ロンドン南部のメルトン市議のデイビッド・ディーン氏は、自分自身生きるアンテナのようだという。「無線LANを設置しているかどうか、家に入っただけで分かる。頭のなかで音がし始める」

「前の職場では、無線LANが設置され10分以上耐えられなかった。上司に相談したが、撤去はされず自分が辞めるしかなかった。心臓の鼓動は速くなり,物が二重に見え始め,ひどい頭痛が起こる。頭をアームロックで締め付けられる感じだ」

「また、小さな子どもが狂ったように泣き喚く家を訪問したこともある。両親に2日間無線LANを止めるように言ったら、こどもの様子が変わったというケースも2回ほど経験している」

「無線LANの電磁波は、携帯電話中継基地局からの電磁波ととても似ている」とイギリスの団体パワーウォッチの代表アラスダイル・フィリップ氏は言う。

「携帯電話中継基地局からの電磁波については、健康影響を指摘する研究が存在する。ラトビアでの研究では966人の子どもで、行動や記憶、注意力の低下が確認されている。影響がでる曝露のレベルは、無線LANのある教室で子どもが浴びるのと同じレベルだ」

イギリス政府の健康保護庁(HPA)のマイケル・クラーク博士は、「我々の測定では、学校での無線LANによる曝露は、国際ガイドラインの20万分の1に過ぎない。携帯電話の場合は50分の1にもなる。だから、無線LANのある教室に1年間い続けると、携帯電話を20分使い続けるのとが同じ位の曝露になる計算だ。もし無線LANを撤去すべきだとなると、携帯電話の中継基地局も、FMラジオもテレビ局も撤去すべきということになる。電磁波のレベルは同じくらいだからだ。

フィリップ氏は、反論する。「現在のガイドラインは、短期的な熱効果による影響しか見ていない。微弱な電磁波を長期間浴び続けることによる影響は見ていないのだ。我々は、電磁波の信号が、人体の中の電気信号や化学物質による情報伝達システムに干渉するのではないかと思っている。

判断の難しいところは、必ずしも全ての人が同じように電磁波の影響を受けるとは言いがたいことだ。
アイルランド環境医師会のエリザベス・カレン医師は、「全体の人口のなかのある特定のグループが、特に電磁波の影響を受け易いのだろうことを示唆する研究がふえてきている。

人口の5%程度は、このような高い感受性を持っていると考えられる。スウェーデンでは障害と認められている。

現在、エセックス大学で、過敏症との自覚のある人と普通の人を対象に、携帯電話中継基地局からの電磁波を浴びせた場合と浴びせない場合での集中力や記憶力の変化を比較するテストが実施中。


出典)Times online 2006 12/11

2006年11月11日

中継基地局 やっぱり危険か?

脳の働きに影響!頭痛も増加

中継基地局の健康影響に関する新たな研究が発表されました。
頭痛や手足の冷えなどの自覚症状が増加し、脳の働きにも影響が出ていました。

中継基地局を気にしない人にも症状
 中継基地局からでる電磁波の影響については、研究そのものが少ないのが現状です。研究者の間では、頭に近づけて使う携帯電話の影響も灰色なのに、桁違いに弱い中継基地局の電磁波の影響など調べられないだろうという思い込みがあるようです。

 しかし逆に一般の人たちの関心は強く、WHOも世論の関心を考慮して、とにかく調査を行なうことを勧告しています。

 これまで健康影響の可能性を指摘した疫学研究は2件だけ。しかしそれらの研究に対しては、「中継基地局が近くにある人たちが、思い込みで、ちょっとした症状でも強めに感じて報告しているだけなのでは」という批判が出されています。

 しかし、ではどうすればこのような先入観の影響を除去できるかというと結構難問です。臨床試験のように実験室で、被験者に(厳密には実験を行なう人にも)分からないようにして電磁波を浴びせたり止めたりして、自覚症状が現れるかどうかを見る方法もあります。
 しかし必ずしも頭痛などの自覚症状が、電磁波を浴びるとすぐ現れるというものではありません。慢性的な長期暴露の影響を判断する場合、臨床試験は難しいといえます。

 そこで、オーストリアのハッター博士たちは新た研究に際して三つの工夫を行ないました。一つは調査対象者への質問事項の中に「中継基地局の存在が自分の健康にどれくらい影響を与えていると思うか」という項目を入れたこと。二つ目は実際に被験者の家の中の電波強度を測定してこと。そして脳の働きを客観的に評価するテストを行なったことです。

 その結果、家の寝室の電波の強さが、0.1mW/㎡以下の人たちに比べて、0.5mW/㎡以上の人たちが、頭痛で3.06倍、手足のひえで2.57倍、集中力の欠如で2.55倍になりました。この差は中継基地局が気になるかというアンケートの結果で調整しても、なお有意な差でした。

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 脳の働きにも影響
 また脳の機能への影響についても、二種類の同じような文字配列を見て違いを見つけるテストで、0.5mW/㎡以上の人たちは間違いを見つける速度が速くなるという影響が出ていました。脳の反応が早くなるのなら良い影響とも感じられますが、しかし早くなった反面、解答の間違いが多くなったというので問題です。
結論として、博士は中継基地局の電磁波による健康への影響を否定することはできない。予防的措置として、中継基地局建設に際しては、近隣への暴露が最小限になるような配慮が必要と結論づけています。

送電線 小児白血病治療にも影響

 送電線の近くに住んでいる子どもは、小児白血病にかかりやすいだけでなく、いったん病気になると治りにくく、死亡率も上がるという初めての疫学調査が発表されました。

 送電線などから発生する電磁波が小児白血病の発症率を上げるという可能性は、これまでの数多くの疫学調査で確認されてきました。 
 ただ小児白血病は、治る可能性が高いガンの筆頭に上げられています。適切に治療を行なえば70%以上が治癒可能だと指摘されています。しかし電磁波にガン促進作用があるとしたら、治療効果にも悪い影響を及ぼすのではないでしょうか?

 アメリカ、カリフォルニア州の公衆衛生研究所のフォリアート博士たちのグループが、小児白血病にかかった子どもたちの治癒率、生存率に対する電磁波の影響を、世界で初めて調査しました。

 1996年9月から2001年1月にかけて急性リンパ性白血病と診断された小児患者1672名のうち、386名の子どもたちを対象に、自宅療養中の子ども部屋の24時間の磁場のデータを入手。 その後2004年12月まで治療の経過のデータから、部屋の磁場の強さによって治癒率や生存率が変化しているかを調べました。

3ミリガウス以上で死亡率が4.53倍
 その結果、小児白血病が再発したり、別のガンが発生した件数が、1ミリガウス以下の小児患者たちに比べて、2ミリガウス未満の子どもは1.25倍、3ミリガウス未満は1.32倍、3ミリガウス以上は1.92倍と増加していました。ただこれらのデータは統計上ばらつきが大きく、偶然の可能性を否定できません(統計上有意差がない)。ファイルをダウンロード

 しかし、死亡率だけで比べてみると統計的有意になり、3ミリガウス以上の子どもは1ミリガウス以下に比べて4.53倍でした。

フォリアート博士は論文の中で「これまで病気の進展に対する影響を調べた調査は無かった。もし磁場がガン腫瘍の促進にも影響するとしたら、再発率や生存率にも現れるのではないかという仮説をたてて調査してみた」とこの調査の新しさを指摘しています。

 ただ、今回の調査では3ミリガウス以上の子どもたちの数が19人(全体の5%)と少ない点などの限界があるとも指摘。結果については再確認する必要があるとしながらも、電磁波が小児白血病の再発や死亡率に影響する可能性を裏付けるデータでだと結論付けています。

 病気中こそ、電磁波の影響については気を使う必要があるのかもしれません。子ども部屋の電磁波についても注意が必要ですが、病院の中の電磁波が気になるところです。

出典)British Journal of Cancer (2006)94(1)

 

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送電線近くは住宅禁止? 英

電磁波による小児白血病リスクの上昇を重視したイギリスは、高圧送電線の周辺での新たな住宅の建築を禁止する措置を検討中。
1兆円以上の不動産価値の損失も伴うものの、イギリスは電磁波対策に本腰を入れはじめたようです。

7万5千戸の強制移転も検討
 イギリスの新聞テレグラフ紙が伝えたもので、電磁波対策を検討する政府の委員会が作成中の報告書草案のスクープです。

 委員会の議論では、既に送電線の近くにある7万5千戸の住宅を強制的に買い上げ、移転させるという案もあったといいます。しかし最終的には、既存の住宅はそのまま残すものの、新たな建築については、高圧送電線(40万ボルトと27万5千ボルト)の場合は周辺70m(230フィート)、13万2千ボルトの送電線の場合は35mの範囲で禁止するという内容になりそうです。

 また、新たな送電線の建設にあたっても、既に住宅がある場所には禁止する措置も含まれるとのこと。もしこの対策が実施されれば、送電線周辺の不動産価値の損失は総額1兆4420億円に及ぶとの試算も出されています。高圧送電線の70m以内にある2万5千戸の家屋の資産価値は1/4減少。また140m以内の5万5千戸の家屋は15%下落すると指摘されているのです。

WHOの予防原則を先取り 
 イギリスでは2004年に、送電線周辺210m以内に住む子どもたちは、小児白血病のリスクが64%上昇するという疫学調査が公表されました。

 この調査結果を受けてイギリス政府は、あらゆる利害関係者を入れた諮問委員会を設置。委員会では、保健省などの関係省庁の代表、電力業界と不動業界の代表だけでなく、小児白血病患者家族の代表や電磁波問題を告発するNPO代表なども参加しています。

 電力業界や不動産業界も合意する形で、今回の対策案がまとめられたという点が画期的ともいえます。WHOが推奨しようとしている「予防的枠組みアプローチ」を他国に先がけて実施したものと評価されます。 
 最終報告書は、6月にも公表される予定。イギリス保健省は「この委員会は、科学的な証拠をもとに、予防的措置を実施する必要性を検討したもの。その提言は、政府も重く受け止める必要がある」と指摘しています。

出典)Telegraph紙 2006年4月29日 他