送電線など低周波電磁場についての海外の対策事例
1)背景
2)小児白血病リスクなどを前提に予防的を採用している例
3)0.4μTを基準に対策を実施したオランダのケース
4)多様な利害関係者を含めた合意形成による対策を模索するイギリスのケース
1)背景
我々が日常的にさらされる電磁波について、様々な健康影響の可能性が指摘されているが、その中でもっとも科学的な証拠が積み重ねられているのが小児白血病のリスクの上昇である。
送電線などから発生する超低周波の磁場による影響で、4μT以上の磁場に長期的にさらされ続けた場合、小児白血病の発症率が2倍程度上昇するというものである。人間を直接対象にした観察研究である疫学調査で示されているデータであり、世界各国の同様の研究で、ほぼ一貫して再現されている点で、信頼性が高いと認識されている。
WHOなどでは、動物実験で指示する研究が少ないことを理由に、証拠は限定的だと判断されているが、諸外国の中には、これらの疫学研究のデータを重視し、何らかの対策を実施しているケースが出始めている。
ここでは、諸外国での対策を実施している具体的なケースをいくつか紹介して、参考なる点を考察してみたい。
2)小児白血病リスクなどを前提に、予防的措置を採用している例
下に示した表が、具体的に数値目標を上げて、送電線からの磁場の規制に取り組んでいるケースの一覧だ。現在国際的に導入されているガイドライン値が100μT(50Hzの場合)より低い値で規制しているが、必ずしも小児白血病のリスク上昇の目安とされる0.4μTとなっていない点が注目される。どちらかというと、「合理的に可能な限りで低く as low as reasonably achievable」という考え方に基づき、各国で合理的に達成可能な値が決定されているのではないかと推測される。
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その中で、2005年に0.4μTの値で、対策を始めたオランダのケースをまず検討してみよう。
3)0.4μTを基準に対策を実施したオランダのケース
2006年11月7日の読売新聞で、オランダの小学校に隣接する変電所で低減対策が取られたケースが紹介されている。(出典1)
小学校の左隣の変電所ができ、不安に思った保護者の要請で学校が電磁波測定したところ、玄関脇が1.6μT、教室の内部でも0.4μTという値が測定された。学校は、とりあえず変電所に近い2教室を別棟に移動。対策をPTA、学校、市、電力会社で協議の上、教室内が0.2μT以下になるよう変電設備に遮蔽設備を導入することが決定された。7万ユーロ(約990万円)の工事費は市が全額負担した。
この様な対策が可能となる背景には、どのような国の政策があるのか?
全国で23000戸、11000人の子どもがリスクにさらされ、今後5000人増加と推定
2000年に発表された2件のプール解析論文(過去の小児白血病の疫学研究データを再解析したもの)の発表を受けて、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は、0.2~0.5μT程度の磁場によって小児白血病のリスクを上げる可能性があるとの見解を発表した。(以下出典2)
2001年の第四次国家環境計画(NMP4)の中で、「現在の証拠の程度は、社会的コストと利益を勘案して適切な予防的手段をとるには十分である」とし、高圧線の近くで0.4μT以上の磁場にさらされている住居数の把握と、今後25年間での増加数の予測、磁場を低減するための技術とそのコストについての調査を開始した。
その結果、既存の高圧送電線の近くで、0.4μT以上の磁場にさらされている住宅数は23000戸、そこに住む15歳未満の子どもの数を11000人と推定した。
さらに今後25年間で新たに建築される住宅数80,000軒の内、何も手を打たない場合、10,000軒が送電線周辺の磁場0.4μT以上の地域の中に建てられ、小児白血病のリスクにさらされる子ども数は5000人増加すると予測した。
地方自治体の土地利用計画でリスク人口を減らす
そこでまず、将来的にリスクにさらされる人口の増加を抑えることを最優先課題として、2005年10月3日に、住宅・国土計画・環境省が、高圧送電線に関する政策を、(州・市などの地方自治体と電力会社に対する勧告を通知した。
勧告の内容は、主な2点。